Dr.二宮のコラム4 皮膚と心身症

【第4回】皮膚と心身症

 

ストレスが多い現代、『心身症』という言葉をよくきかれると思います。

似たような言葉に『神経症』という言葉もありますが

この両者、実はまったく違うものです。

 

心身症の場合は各科領域で身体に症状が出るものであり

どこかの器官に症状があってそれが持続します。

これは、体質としての基盤がある上に

心理的や情動的な要素が加わって生じるものなのです。

 

一方の神経症は、精神症状が主体であり、

いろいろな症状が多発してあちこちに移動するのが特徴。

主に心因的な原因で破傷します。

 

心と身体の関連は、不安や怒りなどの感情がもとになり

身体に変化が起こったり、またその逆で、身体疾患のために

不安や抑うつ状態になったりと、お互いに影響しあっています。

 

皮膚に影響する心身症の代表的なものに

慢性じんましんや円形脱毛症

そしてアトピー性皮膚炎の一部などがあります。

今回はその中でも、比較的多い慢性じんましんについてお話します。

 

 

------- 慢性じんましんの例 -------

 

体格の良い元気そうな男の子が、一年位前から全身にじんましんが発生し

痒くてたまらない、という実例です。

それまでも、小児科や皮膚科で治療してきたらしいのですが

何をやってもよくならないということです。

私のところで検査してみても異常が見られず

抗ヒスタミン剤を内服し、注射をしたのですが

一日か二日でじんましんが再発してしまいます。

 

私は何か方法はないかと考え、じんましんの出る日、出ない日

また何時頃出てどの位で消えるのか、その前に何を食べたか

などを日記に書いて貰うことにしました。

 

二週間の日記では、食べ物とじんましんの関係は全くないようでした。

しかし、発生する時間帯は主に、夕方のようです。

どんな時に出るのか詳しく書くようにいった翌週になって

どうも算数の授業になると出るようなのです。

 

 じんましんが出るようだけど」

また、算数の成績がよくないので毎日塾へ通っているとのこと。

 

「君は算数がきらいなの? 算数の勉強の前になると

といったところ、本人も気づいたようでした。

「算数を勉強するんだ」と意識して心の持ち方をかえ

受容した時から、じんましんは発生しなくなりました。

 

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■アオキクリニック院長・二宮文乃先生プロフィール

 

1963年静岡県熱海市にアオキクリニックを開業。

30年以上にわたって、漢方によるアトピー性皮膚炎や皮膚トラブルの治療の

第一人者で漢方界では知らぬものはない大御所の皮膚科名医。

80歳を過ぎてなお衰えない美貌と頭脳を持つスーパーウーマンでもある。

著書に『季節と皮膚の病気』(ドクターフォーラム出版会)など。