皮膚トラブルの名医Dr.二宮の「キレイは一日にして成らず」
【第11回】虫刺されにご用心! その2
今回は身の回りに多い、ノミや蚊、蜂、ムカデについて説明します。
ノミには犬ノミ、猫ノミ、人ノミなどがみられ、この頃は犬ノミは減って
猫ノミ、人ノミが多くみられます。猫ノミは下肢、特にヒザから下と足背を
人ノミは衣類に被われている部位を刺します。
長年猫を飼っている人は無症状で、飼い始めて間もない人や飼ったことのない人が刺されます。
ノミの唾液物質に対するアレルギー反応であり、即時反応と遅延反応があり
どちらか一方の発症の人と、両方出る人があります。
また、刺されて紅くなってもアレルギー反応の出ない人もいます。
蚊は、イエカ、ハマダラカ、ヤブカなどがあり、日本では120種くらいいるといわれています。
蚊が吸血する時に皮内に注入する蚊の唾液による皮膚反応で、重症なアレルギーになると
刺された後、12時間から20時間後に発熱して危険なことがあり、死亡例もみられます。
即時反応は1-2分後に紅くなり、15分でピーク、一時間後には消えてしまいます。
遅延反応は、4から5時間後にまた紅くなり、24時間から48時間後にピークとなります。
しかし普通はほとんど消えてしまいます。
蜂は、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチなどがあり、露出部を刺されます。
刺すと毒針が刺入します。
激痛と刺された部位に灼熱感があり、やがて広範囲に浮腫を伴った紅斑となります。
ひどい時は壊死に陥り、潰瘍化(皮膚がただれる)します。
過敏症の人やアトピーでは、刺された後、全身症状を発生し、ショックを起こす危険があります。
軒下、樹木の多い所、生垣、森林などによくいます。
七月から八月が多く、クマンバチに刺されて死亡した例も報告されています。
ムカデ(百足)は山の方の住宅地でよく見られ、夏の夜、寝ているときに刺されます。
露出部、特に手足の指など末端がやられます。
刺されたところに強い痛みがあり、その部分が紅く腫れあがるだけでなく
体の中心部へ向かって拡大することが多いのですが、小さなムカデに刺された時は
一部に留まり全身には至りません。
危険な場合、呼吸困難やショック症状を起こす例もあり、顔では顔面神経麻痺を
きたすこともあります。
こんな時は副腎皮質ホルモンの局所注射や静脈注射を行って、危険が去ってから
局所の軟膏治療を行います。
これら虫刺されの場合、通常は適切な治療を施せば、約一週間位で治ります。
中には痒みが強いため掻きこわし、湿疹化、発疹化する例もあるので
簡単に虫刺されと思わず、初期にきちんとした治療を行うべきです。
これからの季節、山や川、海辺へ行く時は、虫に刺されない用心と同時に
刺された時の薬の用意はしておいたほうがよいでしょう。
アレルギーのある人は、より一層の注意が必要となります。
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■アオキクリニック院長・二宮文乃先生プロフィール
1963年静岡県熱海市にアオキクリニックを開業。
30年以上にわたって、漢方によるアトピー性皮膚炎や皮膚トラブルの治療の
第一人者で漢方界では知らぬものはない大御所の皮膚科名医。
80歳を過ぎてなお衰えない美貌と頭脳を持つスーパーウーマンでもある。
著書に『季節と皮膚の病気』(ドクターフォーラム出版会)など。