■アオキクリニック院長・二宮文乃先生プロフィール
1963年静岡県熱海市にアオキクリニックを開業。
30年以上にわたって、漢方によるアトピー性皮膚炎の治療を実践する
 漢方界では知らぬものはない大御所の皮膚科名医。また、80歳を過ぎて
 なお衰えない美貌と頭脳を持つスーパーウーマンでもある。
 著書に『季節と皮膚の病気』(ドクターフォーラム出版会)など。

 

Dr.二宮のコラム12 夏のお肌は要注意! その1

皮膚トラブルの名医Dr.二宮の「キレイは一日にして成らず」

【第12回】夏のお肌は要注意! その1

 

夏といえば、輝く太陽のもと、海や山へと開放的な服装で出かける人が多くなり

日常生活で陽に当たることの少なくなかった人たちが急激に日光を浴びたための日焼けや

海水浴による皮膚炎などのトラブルを生じやすくなります。

予防のことをよく考えてから出かけることが必要です。

今回は、紫外線の怖さについてお話します。

 

生物には欠かせない紫外線ですが、当たりすぎれば害の方が多くなります。

夏休みを利用して短期間のバカンスを海辺で過ごす人が

時間を惜しんで午前、午後と日光浴や海水浴を楽しみ、身体中真っ赤に腫れ上がり

水疱を作って来院する例が多く見られます。

このようにやけどと同じ症状になり、時には命も危険となることもあります。

 

また、家庭用品や医薬品、食料品などに含まれている光感作物質を体の内外に保っている場合

陽を浴びるといわゆる日焼けよりひどい皮膚炎を起こします。

そんな経験がある人は自分の日常生活をよく見まわすべきです。

 

日焼けを繰り返すと、老化が早くなります。

長い間陽を浴びている人の皮膚は厚くなり、しわが深くなって、色黒でしみも目立ちます。

これは紫外線による皮膚の細胞破壊を防ごうとしてメラニンが多くなったり

角層が厚くなったり、もっと進むと真皮層までがやられて、回復しにくくなって変化し

老化してゆくのです。

海や山で若さの特権とばかり日光浴するのはよいのですが、二十代に入ったら要注意です。

 

1978年から94年の短期間に人間活動圏でオゾン層が減少しました。

オゾンが30パーセント減ると、UVA(紫外線A波)は約40倍地上に到達します。

地球が誕生以来46億年(?)、出来上がってきた大気圏の体系を

わずか10年そこそこで破壊するのは、人間の傲慢さです。

便利さを求める文明、頭の良い人が次々に多くのものを発明するからです。

アメリカとソ連の冷戦が終わってからは、かえって不安定さを増した世界状勢から

インド、パキスタンまでが原爆実験をし、さらに地球環境を破壊していきます。

 

大国主義の矛盾は、その行為が批判されながらも最終的には正当化されることが多く

その大国への仲間入りを果たしたいための実力行使としかいいようがありませんが

自らの首を絞めるような状況を私たちは歯ぎしりして見ていることしかできないのは

まことに残念なことです。

そしてさらに有害な紫外線の増加を来たすわけで、ひとりひとりが自らの身を守る

しかないということです。

 

Dr.二宮のコラム11 虫刺されにご用心!その2

皮膚トラブルの名医Dr.二宮の「キレイは一日にして成らず」

【第11回】虫刺されにご用心! その2

 

今回は身の回りに多い、ノミや蚊、蜂、ムカデについて説明します。

 

ノミには犬ノミ、猫ノミ、人ノミなどがみられ、この頃は犬ノミは減って

猫ノミ、人ノミが多くみられます。猫ノミは下肢、特にヒザから下と足背を

人ノミは衣類に被われている部位を刺します。

長年猫を飼っている人は無症状で、飼い始めて間もない人や飼ったことのない人が刺されます。

ノミの唾液物質に対するアレルギー反応であり、即時反応と遅延反応があり

どちらか一方の発症の人と、両方出る人があります。

また、刺されて紅くなってもアレルギー反応の出ない人もいます。

 

蚊は、イエカ、ハマダラカ、ヤブカなどがあり、日本では120種くらいいるといわれています。

蚊が吸血する時に皮内に注入する蚊の唾液による皮膚反応で、重症なアレルギーになると

刺された後、12時間から20時間後に発熱して危険なことがあり、死亡例もみられます。

即時反応は1-2分後に紅くなり、15分でピーク、一時間後には消えてしまいます。

遅延反応は、4から5時間後にまた紅くなり、24時間から48時間後にピークとなります。

しかし普通はほとんど消えてしまいます。

 

蜂は、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチなどがあり、露出部を刺されます。

刺すと毒針が刺入します。

激痛と刺された部位に灼熱感があり、やがて広範囲に浮腫を伴った紅斑となります。

ひどい時は壊死に陥り、潰瘍化(皮膚がただれる)します。

過敏症の人やアトピーでは、刺された後、全身症状を発生し、ショックを起こす危険があります。

軒下、樹木の多い所、生垣、森林などによくいます。

七月から八月が多く、クマンバチに刺されて死亡した例も報告されています。

 

ムカデ(百足)は山の方の住宅地でよく見られ、夏の夜、寝ているときに刺されます。

露出部、特に手足の指など末端がやられます。

刺されたところに強い痛みがあり、その部分が紅く腫れあがるだけでなく

体の中心部へ向かって拡大することが多いのですが、小さなムカデに刺された時は

一部に留まり全身には至りません。

危険な場合、呼吸困難やショック症状を起こす例もあり、顔では顔面神経麻痺を

きたすこともあります。

こんな時は副腎皮質ホルモンの局所注射や静脈注射を行って、危険が去ってから

局所の軟膏治療を行います。

 

これら虫刺されの場合、通常は適切な治療を施せば、約一週間位で治ります。

中には痒みが強いため掻きこわし、湿疹化、発疹化する例もあるので

簡単に虫刺されと思わず、初期にきちんとした治療を行うべきです。

これからの季節、山や川、海辺へ行く時は、虫に刺されない用心と同時に

刺された時の薬の用意はしておいたほうがよいでしょう。

アレルギーのある人は、より一層の注意が必要となります。

Dr.二宮のコラム10 虫刺されにご用心!その1

皮膚トラブルの名医Dr.二宮の「キレイは一日にして成らず」

【第10回】虫刺されにご用心! その1

 

五月から八月の間は、様々な昆虫が繁殖し飛び交う季節であり

蚊、ダニ、ノミ等で刺される虫刺や、蛾、ケムシ、ハチの毒針毛に刺されて生ずる

皮膚炎、「虫刺症」がふえてきます。

刺された部分は赤く腫れ、痒みが強く、掻きこわしてしまうと二次感染を発生して

汚くなります。

小児の場合は膿痂疹(トビヒ)に変化することもあります。

 

ダニによる咬症は痒みが強く、長く続きやすいのが特徴。

古いのは痒疹(ようしん:痒み)となり硬い結節を作ります。

そこへまた新しく刺されると、古いのも再燃して赤くなるのもあります。

どちらにしても痒みが強く、この頃のように住宅環境がよくなり

密閉されて暖房が発達し、年間を通して適温の中では人間への居住性はよいのですが

時にダニにも住みやすい状況で、常時ダニがいる状態が続くため

ダニは一年中刺される可能性があるわけです。

アレルギー性鼻炎の原因であるコナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ、ヒョウダニは

埃に混じって吸収されてハプテンとなり、抗原抗体反応を起こして発症させますが

皮膚を刺すダニはイエダニや野鳥から伝ってくるスズメサシダニなどです。

これらは丹念に掃除しておく以外ありません。

 

他の昆虫類は、春から夏に繁殖するので、その季節に刺されることが多いのです。

ドクガには、チャドクガ、モンシロドクガがあり毒針毛が皮膚に刺さり

有棘層(ゆうきょくそう)から真皮上層に達します。

刺されて三十分後にはチクチクする痛みがあり紅く腫れ、一日から二日後には

小水疱や浮腫が発生、頸囲、胸、腋、側胸などが多く刺されます。

茶、サザンカ、ツバキ、バラなどにいることが多い。

直に軟膏を塗らないで、セロテープなどで針を剥離してから水で洗い

その後で薬を塗るのがよいでしょう。

 

次回は身の回りに多い、ノミや蚊、蜂、ムカデについて説明します。

Dr.二宮のコラム9 SPFとPFAとは?

外出時や、運転時、日当たりのいい部屋にいる時もサンケアが必要です。

サンケアクリームにはSPF18、24、60などという数字がついていますが

これは、Sun Protect Factorの略で、皮膚を紅くするUVBをカットする効果を示したものです。

SPFとは肌が紅くなる迄の時間をどれだけ引きのばせるかを示す数字で

素肌でUVを浴びると20分で紅くなる人がいたとすると

SPF12のサンクリームを塗ったら、20×12=240分、すなわち四時間は肌が紅くならない

という値です。

 

SPFは肌が紅くなるのを防ぐべく測定されたもので、

皮膚を黒くするUVAに対する

効果の数字ではありません。

しかし、最近はUVAとUVBの両方をカットするクリームが推奨されています。

それがSPF・PFAと書かれたものなのですが、この数値も高ければよいというのではなく

30分位迄で充分であり、四時間おきにこまめに塗れば安心です。

 

過敏症の方には、基材にかぶれる場合もありますので、アレルゲンをコントロール

した化粧品で更にUVをカットする成分の配合されたものを使えばよいわけです。

また、一般的にはノンケミカルのUVケアクリームが売られています。

 

 

UVは皮膚がん発生の原因ともなりますが、これも若い時にUVに当たりすぎたことに一因があります。

しかし、UVは皮膚の機能を活発にしてビタミンDを作る働きがあります。

ビタミンDの生成には、体の一部に短時間、日光を浴びればよいので

うまく工夫してUVを利用しましょう。

ビタミンDは食物からも摂取できるし、骨粗しょう症のための内服薬も沢山あるので

無理に日光浴しなくても大丈夫です。

 

五月は陽光だけでなく、全ての樹木が芽を出して成長し、肝の働きも盛んになって

肝陽上亢(頭部に熱を持ち、頭痛やイライラ、めまいなどが引き起こされる)という状態で

神経症状の出る方がいます。

季節の食物を充分に取り入れて、このような状況を作らないようにしましょう。

 

Dr.二宮のコラム8 意外と知られていない紫外線の種類

春の訪れとともに陽光が強くなり、紫外線に弱い人は皮膚炎を発症します。

かつては夏の日光を予防すればよかったのが、今では2月3月でも

晴天の時は用心が必要です。

運転をする人にみられる右半面から頸すじにかけて紅く腫れた皮膚炎の方が

来院された時は、よもやと思いながらもUVテストを行っています。

このような方達の約80パーセントに過敏症がみられるので、春とはいっても

紫外線防御が必要となります。

 

地上に届く紫外線には、UVA(紫外線A波)と、

UVB(紫外線B波)の二種類あります。

UVAは地上に届く紫外線のほとんどを占め、エネルギーは弱いものの

皮膚の深くまで到達して、弾力繊維を破壊し、皮膚のハリをなくします。

一方のUVBは5パーセント足らずですが、エネルギーが強く

皮膚表面の細胞を損傷させ、やけどのような日焼けを起こします。

尚、UVCという、最も有害な紫外線もあるのですが、オゾン層で吸収されてしまうため

地上にはほとんど届きません。

 

 

UVAは五月がピークであり、UVBは八月がピークです。

この季節は正常な人でもUVを浴びれば黒くなります。

但し、生まれつきの遺伝的要素で黒くなる人、紅くなる人などの違いはあります。

 

最近、老人性色素斑(しみ)を気にする人がふえ、レーザー治療を望む方が

多くなり、高齢者でもお洒落が上手です。

UVはこの老人性色素斑を助長するので日光は避けたほうがよいのですが

この症状は、子供の時にどの位日に当たったか、ということによって決まるもの

なのです。0歳から15歳位迄の間、毎日日を浴びるような生活をしていた人に

20年から30年経って発症するもので、昨日、今日、日を浴びたからといっても

老人性色素斑にはなりません。

Dr.二宮のコラム7 アトピー性皮膚炎(AD)と食事その2

【第7回】アトピー性皮膚炎(AD)と食事 その2

 

前回、アトピー性皮膚炎(AD)は、夜九時頃から夜中にかけて

痒みがひどくなり、痒みを減らすためには、外側からは衣類や洗剤

内側からは食事に配慮するお話をしました。

 

今回は具体的に、三食の摂り方について注意点を述べたいと思います。

 

□朝食□

日中活動する人のエネルギー源は朝食にあるため

三食の中では最も比重を置くべきです。

朝10、昼8、夜6の割合のつもりでちょうど良いのです。

具体的には、

魚や肉の動物性蛋白質、豆類、海藻類

季節の野菜(淡色、濃色)、果物、植物油などを充分に摂ること。

 

□昼食□

朝食に次いで重要な食事であることを認識しましょう。

外食する場合も多く、菓子パンやおにぎりなどですませると

皮膚炎は改善しません。

肉や魚、炭水化物だけでなく、ヨーグルトや牛乳、果物や野菜など

栄養面を考え、バランスの取れた食事を心がけましょう。

栄養のある食事をしっかり摂れば、疲れも感じないですみます。

 

□夕食□

一日の仕事が終わると、つい多くのものを満腹まで食べてしまう習慣がみられます。

夕食時間が遅いと、就寝までの時間が短く、満腹状態で布団に入ると

痒みが出てきます。

喘息の場合も同様で、満腹のまま寝ると発作が起こると言われています。

夜中にかけての時間帯に好酸球がまし、痒みがひどくなるのは

食事が関連していると考えられます。

 

 

ADの人は朝起きられず、空腹感がなく朝食が食べられない例が多いのは

夕食の摂りすぎ、特に油脂類が多いと消化が遅くなるという悪循環を

繰り返すため、皮膚炎が改善しにくいのです。

冷える人が多いので、夕食時の冷たい果物や生野菜の多食は

避けた方が良いでしょう。

 

ADの人は冷え性の例がかなり多く、胃腸虚弱のためか過敏性腸炎もよくみられます。

いわゆる過敏性腸症候群(IBS)よりは症状は軽いのですが

軟便や便秘の訴えがあります。

IBSは心身症に属するといわれ、一般的には現代社会においてかなりの頻度でみられます。

多くの人は肉体労働より精神労働に従事する人で

職場その他のストレスが関与していると思われます。

ADの人も同様の傾向が見られ、ストレスにより胃腸症状と皮膚炎が発症します。

 

 

Dr.二宮のコラム6 アトピー性皮膚炎(AD)と食事 その1

 【第6回】アトピー性皮膚炎(AD)と食事 その1

 

人間の生活の中では、リズムが大切です。

そのリズムが崩れると病気になると言われています。

疾患の発生の時刻は、一日中均一ということはなく

それぞれにある時刻に偏っているのがよくみられます。

 

たとえば喘息は夜中の二時から三時に最も起こりやすく

アトピー性皮膚炎(AD)は夜九時頃から夜中にかけて痒みがひどくなります。

これらは、神経内分泌系のリズム、免疫系のリズムが影響しているといわれます。

この時間帯に、副腎皮質ホルモンは最も低くなるのです。

 

さらに、

好酸球数は夜中になると最高値を示し

これはADの炎症も盛んになることを示唆しています。

つまり、ちょうど布団に入って寝る時間と一致するのです。

 

では、ADの最も痒みを生ずる時間帯において

痒みを減らすにはどうすれば良いか?

医療的には、各個人に合った漢方薬などを処方し

患者さんの日常生活では衣類や洗剤に気をつけ

内側からは食事に配慮します。

 

慢性に経過する皮膚疾患は、その発症に素因が関係することが多く

ADも体質的素因に環境アレルゲンが誘因として加わり発症しますが

大部分の小児には胃腸虚弱がみられ、小食で元気がなく

疲れやすい、便通異常など消化機能の弱い子供が多く見られます。

成人の場合も、急性症状が消えてなくなった後

胃腸虚弱や風邪を引きやすいなど、体質的な虚弱として表面化します。

日本は高温多湿なので、体内に水分が溜まりやすく

飲み物が冷たすぎたり、大量に飲みすぎたりすると胃腸を壊しやすいので

注意が必要です。

可能な限り、添加物や農薬のない素材を入手して

各家庭でしっかり調理して、多くの種類のものを万遍なく食べるということと

更に三食のとり方を変えた方が良い結果が得られます。

 

Dr.二宮のコラム5 低体温症について

【第5回】低体温症について

 

最近は、幼稚園児や小学生に低体温症が増え

36度以下の子供が多いとの調査があります。

低体温児は起立性調節障害が起こりやすく

たちくらみや入浴時の気分の悪化が見られたり

疲れやすく、動悸が起こったり、顔色が悪かったりします。

また、乗り物酔いや朝具合が悪いなどで

正常な学校生活が送れない子供も多く見られます。

 

このように、多くの疾患や症状に関連する冷えを治すことは重要です。

一般的に抹消血行をよくするビタミンEを処方しますが、

日常生活で各自が注意すべきは先ず食事です。

寒い時期は温かいものを、暑い時は涼しくなるものを

というのが常識ですが、最近の生活では一年中

冷たい人工甘味飲料やビール、生野菜や果物を多く口にしている人が増えています。

まずはこれらの食生活を改め、季節に合った物を食べるようにします。

温性食物は、ショウガやニンニク、ネギやカボチャ、ニンジンなどの野菜のほか

ミカンやリンゴ、モモなどの果物類

そして、カレーやコショウ、トウガラシといったスパイス類が代表的。

逆に、トマトやキュウリ、ダイコンは涼性食物。

穀物類や海藻類も涼性食物なので、控えたほうがよいでしょう。

栄養のバランスを考えながら、食べ合わせましょう。

 

また、健康食品が多用されますが、状況に合わせて摂るべきです。

アロエは食べ過ぎると冷えて胃腸を悪くしますし

体の強い人が朝鮮人参を摂ると熱がたまるので

血圧が高くなったり鼻血が出たりします。

ドクダミ茶やハト麦茶などは、熱をさます作用があるので

冷え性の人には向きません。

 

体の内側から温めるのには食物ですが

外から関係するのは衣類です。

体を強く締め付けるものは血行が悪くなって体を冷やします。

その結果、生体反応が鈍くなるのでほどほどにし

保温効果のある下着を身につけましょう。

きついジーパンやミニスカートはやめ

下半身を冷やさない衣類の着用を心がけるべきです。

また、夏には十分に汗をかいたほうがよいのですが

建物の中の生活が多い昨今は難しい話でしょう。

特に運動をするよう心がけないと発汗しません。

皮膚を鍛える機会が少ないので乾布マサツや

入浴時の水浴びで、少々の寒冷では皮膚の表面が

寒邪を防げるようにしたいものです。

 

※寒邪とは、東洋医学の『六気(風・寒・暑・湿・燥・火)』のうち

寒さによって体調不良を引き起こす要因。

 

Dr.二宮のコラム4 皮膚と心身症

【第4回】皮膚と心身症

 

ストレスが多い現代、『心身症』という言葉をよくきかれると思います。

似たような言葉に『神経症』という言葉もありますが

この両者、実はまったく違うものです。

 

心身症の場合は各科領域で身体に症状が出るものであり

どこかの器官に症状があってそれが持続します。

これは、体質としての基盤がある上に

心理的や情動的な要素が加わって生じるものなのです。

 

一方の神経症は、精神症状が主体であり、

いろいろな症状が多発してあちこちに移動するのが特徴。

主に心因的な原因で破傷します。

 

心と身体の関連は、不安や怒りなどの感情がもとになり

身体に変化が起こったり、またその逆で、身体疾患のために

不安や抑うつ状態になったりと、お互いに影響しあっています。

 

皮膚に影響する心身症の代表的なものに

慢性じんましんや円形脱毛症

そしてアトピー性皮膚炎の一部などがあります。

今回はその中でも、比較的多い慢性じんましんについてお話します。

 

 

------- 慢性じんましんの例 -------

 

体格の良い元気そうな男の子が、一年位前から全身にじんましんが発生し

痒くてたまらない、という実例です。

それまでも、小児科や皮膚科で治療してきたらしいのですが

何をやってもよくならないということです。

私のところで検査してみても異常が見られず

抗ヒスタミン剤を内服し、注射をしたのですが

一日か二日でじんましんが再発してしまいます。

 

私は何か方法はないかと考え、じんましんの出る日、出ない日

また何時頃出てどの位で消えるのか、その前に何を食べたか

などを日記に書いて貰うことにしました。

 

二週間の日記では、食べ物とじんましんの関係は全くないようでした。

しかし、発生する時間帯は主に、夕方のようです。

どんな時に出るのか詳しく書くようにいった翌週になって

どうも算数の授業になると出るようなのです。

また、算数の成績がよくないので毎日塾へ通っているとのこと。

 

「君は算数がきらいなの? 算数の勉強の前になると

 じんましんが出るようだけど」

といったところ、本人も気づいたようでした。

「算数を勉強するんだ」と意識して心の持ち方をかえ

受容した時から、じんましんは発生しなくなりました。

Dr.二宮のコラム3 生活習慣

【第3回】お風呂と衣類と乾燥肌

 

乾燥が気になるこの季節ですが、少し体が温まると

痒みを訴える人も少なくありません。

特に、入浴後や就寝後が多い様子です。

このような場合、ご家庭では特に『食事』『下着』『入浴』の

『3つの生活習慣』を見直してみましょう。

 

 『食事』

 ・刺激の強いもの、チョコレート、とろろ芋、サバ、わさび等は避けましょう

 ・三食ともバランスの取れた食事を心がけましょう

 ・緑黄色野菜をとるように心がけましょう

 

 『下着』

 ・素肌につけるものは柔らかい木綿のものにしましょう

 ・シャツやブラウスを素肌に着る場合も、木綿のものを選びましょう

 ・洗濯は合成洗剤を使わず、石けんで洗い、よくすすぎましょう

  (更にお酢で中和すると尚よい)

 ・二、三日おきに着がえましょう

  (合成洗剤で洗った下着は皮膚の脂肪分をとりすぎるため余計ガサガサする)

 

 『入浴』

 ・少しぬるめのお湯にゆっくり入りましょう

 ・皮膚に水分を含ませるようなつもりで充分に時間をかけて入りましょう

 ・毎日身体を洗わないようにしましょう

 ・熱いお湯に入ると急に痒くなるので注意しましょう

 ・使う石けんは脂肪分をとりすぎない刺激の少ないものを用いましょう

 

入浴前にバージンオイルをうすくぬると、温まった時に不要な垢がとれ

しっとりした皮膚になります。

また、お風呂上り、皮膚が乾かないうちにクリームのような軟こうを

全身に塗っておきましょう。

 

また、最近ではほとんど見かけなくなりましたが、乾布マサツもおすすめです。

炎症と痒みが無い部分や治ってきた部分には、起床時や着替える前に

タオルなどで全身をマサツします。

 

血行がよくなるので、不要になった垢のような角質層がとれ

その上に軟こうを塗って綿の下着をつける習慣をつづければ

皮膚は滑らかになってきます。

 

Dr.二宮のコラム2 食事

【第2回】冬のお肌を丈夫で美しく保つ食事法

 
寒くなると皮膚の機能が低下して
汗や皮脂の分泌も減り気味になり乾いてきます。

密閉された室内では、
ダニ、ゴミ、カビなどの塵が舞って
空気の乾燥と相まってお肌はいよいよ乾き、
カサカサしたり、アレルゲンによって
痒くなったりするのです。

 

 

このような環境からお肌を守るには、
 ・動物性、植物性タンパク質をたっぷりとって
  栄養補給し寒さに抵抗できる細胞力をつける

・野菜などから効果的にビタミンを補給する
 ・植物油を毎日とる
 ・三度の食事をしっかり食べる
といった、内側からのケアが大切です。
 
なかでもビタミンA・B2・B6・C・D・E・Fといった

誰もが知っているビタミン類が不足すると

身体は代謝が悪くなる、乾燥しやすくなる、血液循環が
悪くなる、抵抗力が落ちるという状態に・・・。

その結果、小じわ、しみ、そばかす、肌荒れになったり
ハリや艶がなくなったりと、お肌は汚くなってしまいます。

 

これらのビタミン類は野菜だけでなく、色々なものに

含まれていますが、タンパク質とともに数種のものと
まんべんなく食べるのがよい食べ方です。

 

野菜の少ない時は海草を食べるといいでしょう。
海に囲まれている日本では、古来身近な食物であり
多くのミネラルを含む質の良いアルカリ性食品です。

特に肉好きの方は、その毒気を中和するためにも毎日、

少量でも海草を食べるのは大変良いことです。

また、カロリーの高い油脂は冬の身体には必要なもの。
体内ではつくられないので、外からとらねばなりません。
しかし、なるべく動物性ではなく植物性のものを使いましょう。
オリーブ油、コーン油、菜種油、シソ油、ごま油などの
不飽和脂肪酸は、毎日ある程度とるべきです。
常温でも液状の植物油は冬でも順調に分泌され、お肌の表面を
滑らかにしてくれますよ。

 

最後に食事内容もさることながら、
一日3回きちんと食べて、腹八分目にすること。
寝る3時間前には食べないこと。
なるべくうす味にして素材の味を楽しむように心がけること。
など食べ方にも気をつかってくださいね。

 

まずは正しい食習慣から。

身体の内側から丈夫で美しい肌を作りあげていきましょう!、

Dr.二宮のコラム1 冷え症

【第1回】冷え性に悩んでいませんか?

 

 世間ではスタイルの良さが讃えられるために、
 若い女性の貧血や、低血圧が問題になっていますが、
 それでも、食事療法とか予防法の話より
 スタイルの方が問題のようです。
 
 貧血や低血圧の人に冷え性が多いような気がするので、
 私は、外来を訪れる人々に
 生理痛は? お腹がはりませんか? 足は冷えませんか?
 などと尋ねると、
 相当数の人が冷え性で困ると答えます。

 

 冬の間は冷たくても、
 春、温かくなれば冷え性が治るのか
 ……と考えますが

生理不順や更年期、内外のストレスをはじめ、
 様々な病気が原因で冷え性を招いていることも
 多いようです。
 
 重要な病気が潜んでいる場合もあるので、
 単なる冷え性と自己判断せずに、
 注意して医師に診てもらいましょう。

冷え性の人というのは真夏でも冷えます。
 
 医学的には
 身体の末梢への血液循環が悪くなって
 そのために手足などが冷える
 ……と考えられますが、
 触ってみては冷たくないのに
 本人にとっては膝から下が
 水を浴びたように冷たい……とか。

腰から下半身が、
 いくら着ても冷える……とか訴えるのです。

 更年期障害の一症状だと思ってましたが、
 実際には十代、二十代の若い人たちにも
 同じような訴えがあるのに驚きます。
 
 では、誰でもなるか?というとそうでもなく、

 

 生理不順や更年期障害に伴う冷え性の場合は
 ホルモン注射でよくなることが多いのですが、
 内服や注射が体に合わない人には、
 漢方療法がよいと思います。